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4/27/2014

The Pillars of the Earth(YL8)

The Pillars of the Earth (Kingsbridge)
Penguin Books (2010-06-29)

The Pillars of the Earth (Kingsbridge) (語数400,974語)

12世紀、封建時代英国が舞台の物語。

テーマは輝かしい大聖堂の建築。

著者のFollettは、細部にわたる野蛮で輝かしい中世の英国を再構築しています。広大な森、壁に囲まれた街、城、教会はおなじみの風景となってきます。戦争の爪痕や、日常生活や労働や愛が、複雑にいりこんで色鮮やかに描き出されます。

いつか立派で美しい大聖堂を自分の手で作りたいと夢みる棟梁のTom、美しい貴婦人Aliena、若くしてKingsbridgeの修院長になったPhilip、Tomの義理の息子となる才能豊かなJack、森の中で暮らし、魔女扱いされるEllen。石工から横柄な君主まで、人物一人一人の生き様が鮮やかに描かれています。

無実の男の処刑から物語は始まり、王の屈辱で終わるまでを、大聖堂の建設をめぐって、Follettは裏切りや復讐、愛で描き切ります。

Ψ

英文は読みやすいです。

登場人物は大勢で群像劇的なところもある。

大雑把にいえば「大聖堂」が軸ではあるものの、結構、個々のキャラクターも細かく描かれているので、誰が主人公なのかな?主人公がいないのかな?という感じで進んでいきます。

そしてバラバラっぽい個々の伏線エピソードの、後半での回収っぷりがハンパないです。あのエピソードをここで拾ってきたか!え、この人物にはこういう運命?…という納得感と驚きが怒涛の勢いでやってくる後半はまさに圧巻。

とはいえ、そんな感じなので、特にお気に入りなキャラクターはおらず、不快なキャラクターは何人かいる、という感じで、伏線エピソードがばら撒かれる前半戦は、なかなかのれませんでした。当時のディティールは面白いんですけど、最初から最後まで不快なWilliam Hamleighを筆頭に、不快な事件も多くて、どんよりしてたんですよね。彼が登場する度に、テンション、ダダ下がり…。

後半はエンジンがかかってきましたが(読書スピードUP!)、最後までこれでもかという位、不幸も訪れまくりなんですよ。

とはいえ、全体としては文句なく面白いです。史実と創作が入り混じって、その史実をこういう風に織り交ぜたか!的な面白さもありますし。個人的に一番面白かった部分は、言わずもがなの大聖堂の建設工程のディティールと、「信仰」の部分ですね。

特に修院長Philipの考え方には興味をひかれました。彼は神との関係がとても1対1で、神はどう考えているだろう、ということをいつも気にしている。他人の目は関係ない。神の視線を気にしている。どうすることが「正しい」のか、神の存在を意識しながら、考え続けている、といった感じです。言われてみれば、そういうものか、と思うわけですが。「無宗教」なので、彼らの「信仰」とはそういうものなんだ、と垣間見た気がしたわけです。

「殉教」の使い方も冴えていたし(殉教者を出しちゃうと、大抵殺人側はわりに合わない位負をしょいこみますよね)、後半での王権と教会との対立と着地点も巧いの一言ですよね。