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4/30/2016

Viking Odinn's Child (Viking Trilogy) (Viking)(YL7.0)

Odinn's Child: Odinn's Child No. 1 (Viking) (語数約124,000語)

物語の語り手はサーガで有名なLeif the Lucky and Thorgunnaの息子Thorgils Leiffsonです。

第1巻では、彼が生まれる少し前の母の話からはじまり(主人公は999年生まれ)、10代の終わりごろまでを描いています。どうやら著者はいろんなサーガを詰め込んだようで、主人公のThorgils自体はLeifの息子としてサーガに登場する人物のようですが、ちょっと気付いた分だけでもSaga of Erik the Red、Greenland sagaあたりはVinland絡みの家系なのでNjáls saga、Orkneyinga sagaあたりも出てきます。

早くに母を亡くし、少年時代にVinlandへ行ったこかと思えば、Greenlandへ戻ってからは父Leifからも疎まれ、半ば母の足跡を訪ねて、IcelandやIrelandへ。そこではアイルランド闘争に巻き込まれ、Clontarfの戦いに参戦…。

後ろ盾もない彼は、どこへ行っても「異端者」で根無し草のキャラクターです。ただし場所、場所で、侵略してくる「White Christ」に抗い、古いしきたりに従う様々なメンターが彼の前に現れ、彼はOdinnの存在を感じます。彼には様々な危険を潜り抜けることになりますが、ギリギリのところで助かり、ますますOdinnの存在を信じるのです。

というわけで、主人公の移動距離・根無し草っぷりが素晴らしいので、VinlandでのSkraelingsとの遭遇や、IcelandでのAlthing見物、Irelandでの様々な領主、王たちの争い、ケルト文化の権化ともいうべき人物との出会いまでいろいろな要素が詰め込まれていて大満足の一冊でした。前半は結構開拓暮らしなので、あ、鉄腕Dashでやってたわーとか思いながら、読んでいました。

ちなみに作者のTim Severinはアイルランド在住のイギリス人ですが、有名な冒険家でもあります。航海伝説を実証するために革張りのボートで実際にニューファランド諸島まで実験航海をしている方です。これほどVinlandまでの航海を語るうえで適切な人もいませんよね。フィクションとはいえ、本書に登場しくる様々な道具や生活ぶりの手触りが、一定程度の説得力があるのも、彼のこうした実験実証魂から相当きているような気がします。

こちらの本も登場人物が相当でてきますので、代表的なところをリストにしてみました。ネタバレありのリストなのでご承知おきください(史実やサーガの人物ばかりなので…)。

主人公の幼年期

  • Thorgils…主人公。999年生まれ。スコットランドの北部Birsay生まれ。クリスチャンネームはThangbrand。
  • Thorgunna…主人公の母。Dublinの貿易船でScotlandの一画mBirsayへやってきた。そこでたまたま寄港したLeif Erikosnと出会う。Völva(シャーマン的な女性)の能力があったようで、主人公もその才能を引き継ぐ。
  • Leif Eriksson…「赤毛のエリク」の2番目の息子。主人公の父。幸運に恵まれているので、「Leif the Lucky and Thorgunna」というニックネームも。
  • Thorvald Erikson…「赤毛のエリク」の。次男。LeifのVinlandの探検の結果に興味を持ち、Vinlandを探索、先住民のSkraelingsに襲われる。
  • Thorstein Eriksson…Leifの末弟。家族思いで、Vinlandで亡くなった兄の亡骸を取り戻しにVinlandへ目指すが…。
  • Freydis…主人公のおば。Erikの庶子。かなりのトラブルメーカー。彼女もまたVinlandへ旅立つ。
  • Thjodhild…Erickの妻。グリーンランドでは子どもたちにアルファベットとかを教える先生役。早くからクリスチャンになったので、夫のErickとはその点で対立。
  • Gudrid Thorbjornsdottir…主人公の幼少時の育ての親。若くて美人な未亡人。Völvaの才能があるようだが、熱心なクリスチャン。主人公が7歳くらいのとき、父親の末弟Thorsteinと再婚。Thorsteinが無謀な旅で亡くなった後には、Thorfinnと再婚。彼と一緒にVinlandへ。
  • Thorir…Gudridの夫。東部出身の商人。グリーンランドとアイスランドの定期貿易のパイオニア。
  • Thorvall the Hunter…五十代後半だが二十代並のタフさで左目から耳にかけて傷があり、少年たちからは畏敬の念。主人公のメンター。
  • Thorfinn Karlsefni…Gudridの三番目の夫。アイスランドの商人。Vinlandを目指す。
  • Tyrkir the Smith…ドイツ周辺出身のLeifにとっては育ての親的な奴隷。メンター。
  • Thorvall the Hunter…五十代後半だが二十代並のタフさで左目から耳にかけて傷があり、少年たちからは畏敬の念。主人公のメンター。

Icelander…主人公がGreenlandから追放された直後に出会った人々

  • Snorri Godi…Icelandでわりと権力者。グレイの瞳で表情を読ませない。じっくり考えて行動するタイプ。
  • Thrand Stigandi…怖そうな見た目だが、Snorriの友だち。Ordinを信仰し、予見能力をもち、主人公14歳くらいのメンター。古い神々について彼の元で主人公は体系的に学ぶ。
  • Flosi Thordarson…Burners側のリーダー。
  • Eyjolf Bolverlsson…法律に詳しいのでFlosiに買収された。
  • Thorhall Asgrimmsson…Njalが育ての親。右の足首が感染している。法律に詳しい。
  • Kari Solmundarson…Njalの義理の息子。戦士。主人公に目をかけ、IcelandからIrelandへの橋渡し役。

Orkney

  • Sigurd the Stout…Orkneyの伯爵。
  • Eithne…主人公の母Thorgunnaをかつてむかえ入れた伯爵家の妻。Ireland出身のVölva。Sigurdの母。

Irelander…1014年Clontarfの戦い前後。主人公が15歳くらい。

  • King Sigtryggr…Dublinの王でSigurdのところへ相談にきた。Norseman。商業で大儲け。
  • High King Brian Boruma…戦いにつぐ戦いで暴れまわっているタイプのアイルランド上王。外国人を追い出そうとやっきだが、彼の兵士自身が外国人で構成。キリスト教を広めようとしている。
  • King of Leinster…DublinをHigh Kingと共に狙っている。
  • Kormlod…IrishはGormlaithと呼ぶ。Dublinの王Sigtryggrの母であり、Borumaの元妻(ケンカ別れなので恨んでいる)。King of Leinsterの姉妹。
  • Brodir…巨漢で髪の長いViking。Dublinの王Sigtryggrが同盟を求めた。Thrandの友だちであり、少し予知の能力をもっている。
  • Donnachad…貧しい村のリーダーであり、Battle of Clontarfで主人公は彼に捕まり、奴隷になった。

St Ciaran…主人公はDonnachadの未納の税金のかわりに教会へ引き渡され、三年くらいを見習い修道士として過ごす。

  • Abb Aidan…修道院の院長。修道院の強化には並ならぬ意欲をもつ。
  • Saev Credine…軟弱にみえるけど、修道院きっての石工。
  • Brother Senesach…若者の教育係。気立てがよいので人望ある。
  • Brother Ailbe…司書。本のことになるとうるさい。
  • Brother Domnall…技量のある診療所の治療師だったが疫病対策で旅立つ。
  • Brother Cainnech…Domnallのアシスタントで、診療所を引き継ぐ。患者をいじめるのが好き。
  • Bladnach…足は不自由だが、凄腕の針使い。本を保護するかばん自体が聖人によるもので貴重だから、ボロボロの鞄の修繕をたのまれる。
  • Orlaith…Bladnachの娘。

逃亡生活中のIrelandで出会った人々

  • Eochaid…birthemということですが、いわゆるケルトのドルイド。あらゆることに精通した賢人で、主人公のメンター。彼の存在は感動的ですね!
  • Ardal…Thorvall the Hunterにクリソツ。King's Champion。戦士。The Ua Cannannainに仕えている。

4/10/2016

Sirens of the Northern Seas: A Viking Romance Collection (English Edition)(YL7)

Sirens of the Northern Seas
Sirens of the Northern Seas
posted with amazlet at 17.10.15
Kathryn Le Veque Anna Markland Violetta Rand Emma Prince Elizabeth Rose

Sirens of the Northern Seas (語数約130,820語)

5人の女流作家によるコレンクション。

それぞれ野の花をモチーフにしたVikingもののヒストリカルロマンスです。

KINGDOM BY THE SEA by Kathryn Le Veque

エドガー・アラン・ポーの「AnnabelLee」という詩をベースに現代と過去が交錯するお話しですね!VikingがBritain側の姫様に恋をする、というちょっとおとぎ話めいた展開です。

BANISHED by Anna Markland

年表片手にしながら、個人的にはこれが一番面白かったです。Bluebellsをモチーフに、Jomsviking(漫画「ヴィンサント・サーガ」とかにも出てくるあの幻の!伝説的な!)出身の幼馴染たちのロマンスです。年表的にはちょうど北海帝国を築き上げようかという1017年のCanuteの動きを把握していればバッチリですね。フィクションかな?と思った人物も英語のウィキペディアだとぞろぞろ実在だったりもして、若干ウソもありつつ(あとがきでどの部分が完全なフィクションか作者が種明かししてくれますが)、かなり史実もハマっています。英国史はちょっと…(面倒くさい)、と思っていましたが、Vikingモノから入っていくのもいいかもしれませんね。彼らの動きを追っていると、西はロシア、東はそれこそ北アメリカまで活動していますから、中世の歴史の勉強になります。

ちなみに、本作でもヒロインたちの過去としては、Jomsborgから追放された後、KievanRus(キエフ大公国)のウラジミール1世にしばらく仕えていたようなので、思わずKievanRusのことも軽く調べてしまいました。

デーン人サイド

★つきはWikipediaに単独頁がありました!

  • Audra Fingalsdatter…ヒロイン。VilingWoman。Kaptajin of the Dødspatrulje 女性暗殺部隊の隊長。
  • Sigmar Alvarsen…ヒロインの幼馴染?2歳年上。huscarlsとしてCanuteに仕える。
  • Fingal Adreassen…Audraの父。
  • Alvar Haraldsen…Sigmarの父。Fignalの息子をかつて殺した。
  • King Canute★…デンマーク人で、イングランド・デンンバーク・ノルウェー王。
  • Queen Elfgifu★…Canuteの最初の妻。サクソン貴族の娘。WikipediaだとAelgif of Northamptonの表記で。
  • Gertruda…ヒロインの右腕のVikingWoman。暗殺集団The Dodekaに参入。
  • Vasha…ヒロインところの古参のVikingWoman。暗殺集団The Dodekaに参入。
  • Dagmar…Sigmarの信頼できる戦士。暗殺集団The Dodekaに参入。
  • Nathan…Sigmarの男奴隷。
  • Torkild den Høje★…Jomsvikingの親玉。Canuteの幼少時のメンターでもあるらしい。以前はEthelred無思慮王と組んでいた。
  • Eadric Streona★…Torkild以上に同盟を切り替えまくっている海賊。Ethelredの娘と結婚。ちなみにCanuteの最初の妻、Elfgifuの父親Ælfhelm of Yorkはこの人に殺されています。さらに1016年のBattle of Assandunで、この人は今度はEdmud Ironsideを裏切って、Canute側についてました。裏切者の代名詞ですね。

イングランドサイド

  • Ethelred the Unready★…最終的にCanuteに追っ払われるイングランド王。1016年に病没。
  • Edmund Ironside★…Ethelred the Unreadyと最初の妻Ælfgifuの息子のうち3番目。上二人が死んだので、イングランドの王座に。Battle of Assandunで決定的な敗北を喫し、Canuteと和平交渉。どちらかが死んだ時は、死んだ方の領土を生きている方に譲るという話も決めて、1016年のEadwigの死をもって領地はCanuteに譲られ、Canuteはイングランドの王に。
  • Eadwig Ætheling★… Ethelred the Unreadyと最初の妻Ælfgifuの息子のうちの5番目。1017年にオックスフォードでCanuteに和解を求めています。

VIKING HEARTS by Violetta Rand

Hesse(今のドイツ北部)に家族と住んでいたヒロイン一家はある日、キリスト教圏の手におちて、ヒロインのみ、居合わせたノルウェーの貿易商に拾われてTrondelagまで連れていかれる話。物語が723年からはじまえるのに、なぜかHakkon Sigurdsson(900年代に活躍)の巻物とかでてきてとても混乱しました…。話自体は結構面白いのに、冒頭の723年に縛られてテンションだださがり。Hakkon Sigurdssonが出てくるならスタートという記述自体は不要ですよね。

In THE BRIDE PRIZE by Emma Prince

春を一番先に告げるcoltsfoot(フキタンポポ)がモチーフのお話。本人は女戦士として、西の新しい土地へ向かうJarlの船に乗り込みたいのに、ケチケチした親はさっさと嫁にいけといい、そうだ、祭りの賞品として娘を嫁にだしてしまえ、とたくらむ話。そこへその冬の厳しさに家族をすべて亡くした若者があらわれて…。

A VIKING'S PROMISE by Elizabeth Rose

Forget-Me-Nots(勿忘草)がモチーフのお話。793年のイギリス北部の修道院LindisfarneのVikingによる襲撃は、Viking史的には有名ですが、どうやらそこの部族の話ですね。おさなじみのJarlの息子と結婚の約束をかわすものの、Vikingとして乗り込んだ襲撃先のLindisfarneに置き去りにされてヒロインは恨みつらみ…。結構、クリスチャンの慈悲が軸の話のような気がしました。翻ってVikingはとにかく生活の為に襲撃する、というスタンスで、日本でいうところの倭寇のイメージをもてました。

4/02/2016

The Viking's Son (The Viking Series Book 3)(YL5.0)

The Viking's Son (The Viking Series Book 3) (English Edition) (語数約65,720語)

族長Bissetの娘のDonaldina。彼女の母親は、彼女が4歳のときに亡くなったのだと父はいう。彼女はなにかがおかしいと疑がっているが、それがなんなのか知ることはできなかった。Donaldiaの母親の死後、父親は後妻を次々娶るも、一番愛したのはDonaldiaの母で、Donaldiaを一番にかわいがってくれていた。しかしほかの家族からはかえって嫉妬され、Donaldiaは孤独だった。そんな彼女も今や成長し、Donaldiaを疎ましく思っている後妻にもそそのかされて、父親はついに彼女を結婚させようと決心した。Dpnaldiaは結婚したくはなかったし、なんとかそのたくらみから逃れようとしていた。そこへMacGreagor族の長Wallaceが彼女の氏族からスパイスを仕入れに遠路はるばるやってきていて、彼女は今回も完全に結婚などする気はなかったのだ…。

Ψ

というわけで、Vikingシリーズの3巻目・最終巻は、Stefanの長男Wallanceと、Bisset族のDpnaldiaとのロードムービー的展開でした。

2巻で7人のViking兄弟がきてから五年後のお話しですね。

残念なことにその間に、Stefanとその子どもたちは病死していて今回は登場しません!10人いた子どもたちのうち、生き残ったのは二人の姉妹と二人の兄弟という切ない状況でした。2巻からたった5年でこのありさま。昔の人、ほんとサイクル早いですよね…。

一方、ノルウェーからやってきた7人兄弟はみんな元気で、今回はKarr以外の6人がWallanceの従者としてBisset族のところまで一緒にやってきていました。ちなみに7人はかつてはOdinを信仰してたけど、今はみんなCatholicみたいですね。2巻ではWallance君は、とってもまじめで手厳しいイメージでしたが(下の子たちはみんな優しい長女のCatrinaが大好きで、わりと空気を読まないWallanceについて「なんでWallanceって長男なの?」とか文句を言われてたのが懐かしい)、うん、今回も、結婚したくなくてぷりぷりしているDonaldiaの扱い方がもう…(笑)。MacGreagorの誓いもあるし、じゃじゃ馬ならしは大変そう。Wallanceの四苦八苦を、既婚者もちらほらいるViking兄弟が笑っているのが楽しい。

さらにそこへDonaldiaどころではないわがまま娘が同行することになり、読んでいる方は、へーかつての旅はこんなふうなことに注意しながら旅してたかもね、とか思いつつ、とても楽しく読めました。

とはいえ、Donaldiaの父は、身から出た錆的なところはあるとはいえ、最後は許されないままでかわいそうでしたね…。生物学的になんでそんな疑いもったの?(めっちゃレアケースですよね)とも思うし、残虐は残虐ですが、どっぷり惚れてたわけですからね。

The Viking Seriesブログ内リンク

  1. The Viking (The Viking Series Book 1)
  2. The Viking's Daughter (The Viking Series Book 2)
  3. The Viking’s Bride (The Viking Series Book 4)
  4. The Viking's Honor (The Viking Series Book 5)
  5. Viking Blood (The Viking Series Book 6)

主な登場人物

  • Donaldina Bisset…Donaldと二番目の妻Lanieとの間の子。金髪。
  • Donald Bisset…スコットランド南部の領主。
  • Lanie…Donaldiaの母親。クリスチャンネームはElaine。イングランド人。
  • Tearlag…Bissetの五番目の妻。Donaldiaに嫉妬して嫌う。
  • Nathair…Tearlagの兄弟。
  • Mairi Bisset…美女になるだろうと言われていた少女。
  • Wallance MacGreagor…Stefanの長男。MacGreagorの長になっていた。
  • Odhan…族から追放されてどこにも所属していない。
  • Bawheed…Odhanの息子で10代前半の少年。
  • Conall MacTavish…のんきなハッピー男。めちゃくちゃ記憶力がいいし頭もよさげ。MacTavish族長の代理で、各地へメッセージを伝えたりしている。
  • Ceit Mackay…Odhanに捕まっていた少女。14歳。と思いきや、実はMacTavishでColnalの妹だった!かなりのわがままで、旅の道中の兄弟全員をげんなりさせるw
  • Laird MacGavish…MacGavishの長。
  • Luke…Donaldiaの古い友達。
  • Juliana…Donaldiaの双子のきょうだい。
  • Magnus…双子男子の父親になってた!
  • Nikolas…未婚。星好き。