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3/18/2017

The Last Queen(YL6)

The Last Queen (English Edition)
Hodder & Stoughton (2010-09-10)

The Last Queen (English Edition) (語数約124,000語)

物語はスペインによるレコンキスタ、1492年のグラナダ陥落から。スペインの王女Juanaは13歳。両親のFernando王とIsabel女王がスペインを統一し、ムーア人を排除するという印象的なシーンからはじまります。両親は娘たちを次々と同盟の為各国へ嫁がせ、年頃になった主人公のJuanaもハプスブルク帝国の後継者であるFlandersのPhilipのもとへ嫁ぎます。彼女は会ったこともないPhilipの為に愛する祖国スペインを離れがたかったけれども、Philipの美男子ぶりにすぐに恋に落ちてしまいます。二人は子宝にも恵まれ、Philipは浮気性の気質をみせつつも、おおよそ順調な結婚生活を過ごします。しかし故郷のスペインでは、王位継承者たちが次々に不幸に見舞われ、彼女は次の王位継承者になってしまいます。その状況に夫のPhilipは、スペインの王になる野望をいだきます。両親の思惑や夫の野望の板挟みになってしまう主人公。そうした状況が彼女を限界まで追い込んでいく…、という展開です。ちまたでは愛する夫Philipが早死にし、気が狂ってしまった女王…というイメージのようですが、本書では全く異なる解釈をしていますのでお楽しみに…!

これまでなんとなくレコンキスタを完了させたカトリック両王の時代は盤石な時代…という印象がありましたが、こんなにも跡取り問題や諸侯との緊張関係ですぐにも崩れそうな状態でもあったのですね。父親のFernandoがAragonの王で、母親のIsabelはCastileの女王。二人が結婚することでCastileとAragonを合わせてスペインと呼び、二人はスペインのレコンキスタも完了させるほどのパワーをもっていました(コロンブスがIsabelの支援で新大陸を発見するのもこの頃!)。しかしCastileの諸侯はAragonの王であるFernandoをよそ者として嫌っているし、AragonはAragonで男系しか王として認めないという法があるので、本来はカトリック両王の長男がスペインをまるごと継承すれば丸く収まる話でした。しかし長男は若死、問題は噴出です。カトリックで一夫一婦制なのに、男系だけが跡継ぎというAragonのシステムにそもそも無理がありますね。お産での死亡率は高いので、王ともなれば後妻というカタチで腹違いの兄弟たちがいることもありますが、それにも限界があります。主人公は女性なのでCastileの女王にはなれてもAragonの王にはなれない。一つ世代を飛ばして、孫たち世代に期待がかけられるわけですが、最初の男の孫も死んでしまい、主人公の息子たちに期待がどっと押し寄せるわけですね。

ちなみに妹のCatalinaもガッツリ登場。CatalinaはHenry VIIIの最初の妻で、映画化もされたThe Other Boleyn Girlにも登場しますね。"そういえばあの中でCatherine of Aragonってめっちゃ呼ばれてたわ。Aragonって父親がAragonの王だからなのか"となんだかいまさら状況が飲み込めてきました。でもどうしてCatherine of Aragonと呼ばれ、SpainとかCastileじゃないのかはよくわかりません。JuanaはCastileの女王なので、Juana of Castileと呼ばれる点はナットクですが、どうしてCatherineはAragonになってしまうのか…。

そして最後の最期、あとがきを読んでいて作者が男性であることに驚きました。この作者、Amazonのリコメンドでルネッサンスの女性を主人公とした著作ばかりでてくるし、本書ではJuanaの周囲の男性は自分本位でDVだったり、ロクでもない男どもばかり登場するので、なんとなく女性が書いているのだと思いこんでいました。インタビュー記事を読むと、ジェンダーは関係ないと。役者が本人とは全然違うキャラクターの役になりきるように、自分も役になりきるんだよ、とさらっと答えていました。そういうものなんですねぇ…!インタビュー記事ではアメリカ人だと(作者は半分スペイン育ちですけど)、ヨーロッパの先入観から、ちょっとは自由になれてちょっと違った切り口で書けるんだよ、という話も出ており、ははぁ、日本人が書いたらもっとフラットかもね、なんて思いました。

The Last Queen by C. W. Gortner - book trailer