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11/08/2014

Kindred(YL5)

Kindred
Kindred
posted with amazlet at 17.03.20
Beacon Press (2004-02-01)

Kindred (語数96,452語)

現代の黒人女性Dana。カルフォルニアの新しい家で夫と26歳の誕生日を一緒に迎えていたその時、突然、南北戦争前の南部の世界へ飛ばされてしまうというタイムトラベルものです。

物語ではアメリカ建国記念日200周年目の1976年と、1800年代を彼女は行ったり来たりします。彼女の祖先にあたる白人少年Rufusが危機に陥る度に、彼女は過去へ飛ばされ、少年を助けることになります。しかし命の恩人とはいえ、彼女は黒人なので周囲からは奴隷として扱われます。

1970年代的な考え方と、奴隷制度が「常識」だった南部の人々の考え方のはざまでの葛藤や、当時の人々の暮らしぶり、考え方が、「タイムトラベル」を通して、生き生きと描かれています。

Ψ

とにかく主人公のDanaが魅力的でした。現代人としての「常識」をもちながらも、そこまで一方的に当時の白人たちのやり方を責めたりはしない。そんなことを黒人の身でやったら命がいくつあっても足りないし、所詮は歴史を変えられないという諦念もあったと思います。でもだからこそ、ときには他人を傷つけ、自分も傷ついている白人の葛藤までも、かなりフラットに見つめるのですね。与えられた状況の中で、葛藤しつつも彼女は最善を尽くしたと思います。

本書は1979年にアフリカ系アメリカ人のOctavia Butlerによって書かれました。70年代にこの小説が出版されたことに、驚きを感じます。まずは当時にここまで書ける女性のSF作家がすでにいたのか、という驚き!世界は広いですね!

本書の舞台は1976年で、公民権運動もひと段落したくらいの時期ですが、DanaやKevinはかなりリベラルな感じなんだろうな(だからこそ今読むと、すごく感情移入しやすい!)ということはみてとれます。白人のKevinと黒人のDanaの結婚にいたるまでの騒動を描くことで、彼らの親世代はまだ人種差別の傷を引きずっているし、周囲も彼らほどのリベラルというわけでもなさそうだ、ということがわかります。そういう環境の中でここまで書ける、というのは、本当に凄いと思います。葛藤があるからこそ、ここまで書けるのかもしれませんね。

英文は読みやすいです。とにかく面白いし、グイグイ読めるので、オススメです!

南部の農園ということで、個人的には「それでも夜が明ける」の映像がすごくこの小説の情景と重なり合いました。南部の農園の様子を知るには、こちらの映画もいいかもしれません(全然夜は明ける気はしない映画でしたけどね…。原題は「12 Years a Slave」なのに、なんでこの邦題にしたのでしょうか)。

10/26/2014

The Clan of the Cave Bear (Enhanced Edition) (Earth's Children)(YL7)

The Clan of the Cave Bear (Earth's Children)
Hodder & Stoughton (2010-12-21)

The Clan of the Cave Bear (Earth's Children) (語数196,000語)

氷河期末期の時代、クロマニヨン人の少女は、不案内で危険な土地を一人で彷徨っていた。大地震がおき、彼女は両親を失った孤児だった。

同じく大地震で住処としていた洞穴を失った「氏族」(ネアンデルタール人)は、新たな住処を探して旅をしていたところ、彼女と出会う。

彼らにとって、ブロンドで青い目をしたAylaはかなり異端で、醜い少女だった。彼女は彼らのもといた土地の近くに住んでいた異なる種族(クロマニヨン人)の一人だった。

しかし氏族のまじない女のIzaは、ほっとけば死ぬとわかっている少女を見捨てていくことができず、彼女を自分たちと一緒につれていくことにした。IzaとMog-urのCrebは彼女を可愛がりながら育て、Aylaは次第に氏族の生活に慣れ、もっとも彼女を受け入れてくれたIzaの癒しの技術を学び始める。

しかし、残虐でプライドの高い次期リーダーのBroudは、彼の権威を傷つけかねない彼女の異質さを嫌うのだった。彼は次第に憎悪の念を育て、いつか自分がリーダーになったときに、復讐しようと決心する。

Ψ

邦訳版で最終巻の1歩手前まで読んでいるこちらのシリーズ。邦訳の方も完結しているのは知っていましたが、その頃には多読をはじめていたので、いつか原書で読んでみようと今までとっていましたよ。ま、このシリーズ、1巻が一番面白いので、今後どこまで読み続けることになるのか、わかりませんが…(2巻もそれなりに面白かった筈なので、2巻までは読むでしょう)。

物語の筋はぼんやりながら把握しているので、思った以上にかなりツラツラと読めました。若干薬草関係なんかは読みづらかったり、氏族の名前で混乱したりもしましたが、英文はそこまで難しくないと思います。そして文句なしに1巻は面白いです!

以前読んだときには氏族の「記憶」があまり釈然としていなかったのですが(特にIzaが薬草の「記憶」を取り出しますよね。「そんなに具体的に取り出すことのできる記憶って?」とそこで思考停止していました)、「本能」と置き換えれば、あぁ、より旧人類の彼らにはそういうところがもしかしたらあったかもしれない、と思えたり。氏族とAylaのミックスのDurcに関しても、最新の研究ではクロマニヨン人とネアンデルタール人の交配があったという話もでてきていますから、途端にCrebの「希望」にも現実味がでてきたり…。

Izaの愛情の深さには本当に心をうたれるし(彼女の遺言ときたら…!どこまでAylaのことを思いやっているのか)、Crebの洞察力はさすがのMog-urの中のMog-urだとあらためて感嘆したり(物語の中ではシャーマンのような存在です)。

邦訳版を読んだのは、10年近く前の話なので、今回「再読」にもかかわらず、本当に没頭しましたよ。長いですけど、読み終わってしまうと寂しいです。邦訳版の2巻は結構ウキウキしながら読んだ記憶はあるのですが、クロマニヨン人には、なかなかIzaやCrebたち以上のキャラクターが出てきませんのでね…。

登場人物メモ

  • Ayla…主人公。クロマニヨンの孤児。
  • Iza…Aylaをわが子もように慈しむ。氏族のまじない女でステータスがある。
  • Creb…氏族の大シャーマンみたいな存在。Aylaをかわいがる。
  • Brun…氏族の良きリーダー。IzaやCrebの兄弟。
  • Broud…Brunの息子。次期リーダー。
  • Uba…Izaの実の娘。Aylaと姉妹のように育つ。
  • Durc…Aylaの息子。
  • Oga…Broudの妻。
  • Brac…BroudとOgaの最初の息子でAylaに命を救われる。
  • Zoug…Slingの達人。
  • Goov…Crebのmog-urとしての役割を引き継ぐ青年。マジメだが小物感漂う(Crebが凄すぎた)。
  • Vorn…Broudを崇拝している男子。

9/27/2014

Say Goodnight, Gracie

Say Goodnight, Gracie
Say Goodnight, Gracie
posted with amazlet at 17.03.20
HarperCollins (2013-08-13)

Say Goodnight, Gracie (語数41,700語)

離れて生きていくことなんて想像できない友だちだった。

MorganとJimmyはそれこそ赤ん坊の時から一緒に過ごしてきた仲だった。夏の暑い日々には、ポーチをぐるぐる一緒にまわっていた幼馴染のふたり。

そのまま彼らはずっと友達としてすごし、いまでは互いをよく知りつくしている。なんだって一緒にやっていた。学校が終わった後の放課後も一緒に町へでかけてそれぞれダンスオーディションや俳優のワークショップにいそしんでいた。

彼らは遠慮なく言いたいことを言い合った。それができる完璧な友情。ベストフレンド。

しかし人生はどうしてこんなにしっくりきたり、おかしくもなったりもするのだろうか?ひどい事故の後、Morganは突然ひとりで人生に向き合わなければならなくなった。Jimmyがそばにいないということ。それはつまり彼女の最高の部分が死んでしまったようなものだ。どうして愛はこんなにつらいのだろうか?

Ψ

母親同士も親友で、生まれた時から友達だった。ある日、事故で片方が死んでしまう。

事故以前の二人の話も結構詳しく描かれていて、こんなに相手に遠慮なく依存しているのって…、と思うところもあり、そこまでどっぷり二人の関係を肯定的にみていたわけではありません。が、二人の周りの人々のセリフにジーンとくる部分は多かったですね。Morganを見守る彼女の両親そうだし(特に父親…!とても穏やかだし)、Jimmyの母親の立ち直ろうとする様子。それに精神科医の叔母。同級生のJodyもなかなかの大人で。悲しみにのたうちまわっているMorganのまわりをしっかりささえてくれる彼らの存在にほっとするし、セリフひとつひとつがいいんですね。

というわけで前半はそれほどのめり込めず、後半はいろいろ気になるセリフやシーンが増えて加速して読めました。英文はわりと平易だと思いますよ。

9/23/2014

Magic Tree House: Books 5-8 Ebook Collection: Mystery of the Magic Spells(YL3)

Mystery of the Magic Spells (A Stepping Stone Book Box set)
Random House Books for Young Readers (2013-12-18)

Mystery of the Magic Spells (A Stepping Stone Book Box set) (語数20,653語)

  1. Night of the Ninjas
  2. Afternoon on the Amazon
  3. Sunset of the Sabertooth
  4. Midnight on the Moon

タドキストのメジャーどころ、Magic Tree Houseの#5~8までがセットになっているKindle版です。個別に購入するよりまぁお安いのでこちらをチョイス(←本ブログにのせていますが、過去に1~4までは読んでいます)。

「Mystery of the Magic Spells」という副題がついている通り、Magic Tree Houseの主、Morganに呪いがかけられて、JackとAnnieの二人が彼女を助けるために奔走する展開です。#5~8でちょうど救出劇がはじまって終わるという区切りのいいセットになっています。

月まででかける8巻が一番情報量も多くて、物語的にもケリをきちんとつけているので、充実していたかなぁと思います。

若干情報量的に内容が物足りなさを感じた6巻Afternoon on the Amazonでは、最後にJackが素敵な科白を言っています。

You don't have to love them,

Just leave them alone.And they won't bother you.

地球上にはさまざまな生物が住んでいるわけですから、ホント、お互い干渉しあわずに生きていければいいですよね。

9/22/2014

Son (Giver Quartet)(YL5)

Son (The Giver Quartet) (The Quartet Book 4) (English Edition)
HarperCollinsChildren’sBooks (2014-07-31)

Son (The Giver Quartet) (The Quartet Book 4) (English Edition) (語数76,096語)

皆は彼女をWater Claireと呼んだ。嵐の後、彼女は岸辺に打ち上げられていたから。

彼女が岸に打ち上げられたとき、だれも彼女がどんなコミュニティからきたかを知らなかった。

感情も、色も存在しない世界。彼女が13才で「器」となった世界。彼女が14才で「製品」を生んだ世界。彼女からそれをとりあげてしまった世界。そんな世界は人々の想像を超えていた。

しかし彼女はとりあげられた「製品」──息子に愛情を持ちはじめる。ただ一人、彼女だけが、そのコミュニティの中で密かにわが子に対する愛情を抱きはじめる。息子を追い求めてある日、彼女はとある船へ乗り込むが、船は嵐に巻きこまれ、彼女は記憶喪失となる。

打ち上げられた岸辺の付近に住む人々に助け出された彼女は、新しいコミュニティへも次第に溶け込んでいった。かつてのコミュニティのことも忘れ、息子のことさえも忘れさったかにみえた。しかし、そんなことはありえなかった。記憶を取り戻した彼女は、想像を絶する犠牲を払ってでも、彼女の息子への思いをとめられないのだった。

Ψ

というわけで最終巻です。ヒロインのClaireが生まれた世界は、1巻The GiverのJonasと同じコミュニティです。ヒロインはJonasの妹がなりながっていたBirthmotherで、Jonasが救い出した赤ん坊の母親なので、The Giverよりも少し前の時代から第4巻はスタートします。

この4巻で一気に1巻~3巻までがつながってきます。1巻で少し話題になっていたBirthmotherたちの施設での暮らしぶり、Jonasも与えられた錠剤の秘密、そして3巻でJonasたちの村に現れた謎の男、Trademasterとは一体なんだったのか…。「物語」としては、きれいに伏線を回収してエンディングを迎えます。

きれいに伏線を回収しているし、悪くもない終わり方ですが、ただ私は、1巻や3巻で現実世界の投射を物語の中にみて、一体、Jonasたちは今後どういう未来を築いていくのだろうか?などと思ってしまいました。そういう意味では、Trademasterとの対決という形で物語のエンディングを迎えたことは、少し残念でしたね。Trademasterという「目に見える形の敵」を作って物語を回収した、といった印象です。答えのでない問題であり、私たちが常に意識していないといけない類の問題ですから、下手な解決方法の提示よりも作家としては「正直」なエンディングかもしれません。

英文についてはシリーズもので世界観をつかんでいる分だけ、ラクに読めると思います。ただ語数はこれまでよりもずいぶんあります。特に3巻は少な目だったので、特にそう感じました。

それにしても、途中、Claireがあんなマッチョな展開になるとは思いませんでしたよね!

※Giver Quartetシリーズ、ブログ内リンク

  1. The Giver
  2. Gathering Blue
  3. Messenger
  4. Son

9/13/2014

Messenger(Giver Quartet)(YL5)

Messenger (The Giver Quartet) (The Quartet Book 3) (English Edition) (語数36,627語)

奇妙な変化が村の中では進行していた。

かつてユートピアだったコミュニティは、よそ者を歓迎していた。そもそもこの村の住人たちの多くは、よその村からの追放者たちの集まりだ。この村で生まれ育った者もでてきたが、多くはなんらかの事情があってよその村からやってきたものたちだ。お互いをいたわりあって、コミュニティを形成していた。

しかし村はまもなくすべての部外者に対して閉鎖するという決議をとった。これ以上、移民を負担することはできない。川からとれる漁獲高も減ってきたし、お互い噓をつかない、盗まない、助け合うといった村のルールを新参者のよそ者に対して"教育"するコストもばかにならない。よそ者を受け入れるメリットはどこにあるのか?

村の周囲は深い森だった。森には野獣こそいなかったが、森からの「警告」を受けたものが森に分け入ると、森に殺された。森からの「警告」は鋭い小枝での攻撃、刺してくる虫、有毒植物などのケガといった形であらわれる。

Mattyは危険なその森を通って旅することができるごくわずかなもののうちの一人だった。彼は森から好意を受けているようで、何度となく無事に森を潜り抜けていた。結果として、Mattyは点在する他のコミュニティへ、村の決議の結果を伝えるメッセンジャーとなる。それと同時に、村の閉鎖前に、Seerの娘でありMatty自身の幼馴染でもあるKiraを、説得して村へ連れてくることをSeer自身からも頼まれた。しかし指名を受けたMattyがいざ森へ入ると森は敵意をみせた。果たして彼は村の閉鎖前に、KiraをSeerの元へ連れてくることができるのか。

Ψ

ようやくこの3巻で、1巻と2巻の物語がつながりました。この村の中で1巻の主人公Jonas は"Leader"と呼ばれているようです。

盲目の人Seerは、2巻のヒロインKiraの父ですし、Mattyはあの犬を連れて回ったいたずら小僧のMattですね。

前半はかなり面白く読みました。1巻や2巻で出てくる残酷なよそのコミュニティの様子を知っているだけに、2巻ではKiraの父が世話になっている村はまさにユートピアに見えました。そして実際、この村はユートピアだったのです。1巻からこのシリーズにつきあっている読者にとっては、JonasはLeaderとしてこんな村を作っていたのか、と感慨深いものがありました。しかし、そのユートピアでさえも、世代交代もしてないというのに、移民排斥の動きを見せます。

移民排斥──どうしたってリアルな世界でのEUのことを連想してしまいます。或いは独立の動きをみせているスコットランドのこと(独立した方が経済的に得なんじゃないか、小さな枠組みの方が自分たちの意見がより反映されやすい民主主義になるのではないか等々が議論の要のようですね。アンチグローバリズム的な側面を感じますが、この押し寄せるグローバルの波の中でリアル世界ではそんなことが可能なのか?など。小説の中では森に囲まれているという独立性があるので、一種の島国根性でやっていけるかもしれませんが)。

一体、Jonasたち村人はこの問題にどういう結論を出すのでしょうか?期待したいと思う一方で、現実問題をふりかえっても、そうそう安易に出る答えではありません。

ここで村が閉じてしまえば、結局、ユートピアは存在しない or 閉じた世界でしか「ユートピア」は完結しない、ということではないのか?etc…。

しかしこの巻では、未決着のまま、衝撃のラストを迎えます。あの優しいいたずら小僧が…、という感じで、ちょっと消化不良気味なのですが、4巻では一体どんな展開が待っているのでしょうか?

※Giver Quartetシリーズ、ブログ内リンク

  1. The Giver
  2. Gathering Blue
  3. Messenger
  4. Son

8/31/2014

Gathering Blue (Giver Quartet)(YL5)

Gathering Blue (The Giver Quartet) (The Quartet Book 2) (English Edition) (語数47,964語)

母が亡くなり孤児となってしまったKiraは生まれつき足が悪く、コミュニティの中では役立たず。孤児となった今、「原野」へ連れていかれ、獣に食われることになるかもしれない…。どうすれば生き抜くことができるだろう?と思っていた矢先、彼女は「評議会」から呼び出された。彼女の突出した刺繍の才能を「評議会」が認め、彼女は刺繍に集中できる設備の整った建物で暮らすことになったのだ。世話係が食事や洗濯をしてくれ、衣食住の面倒はすべてみてくれる。刺繍にまつわることにだけ、集中できる整った環境だ。

彼女が「評議会」から与えられた任務は、特別なローブの復元作業だ。年に一度、「廃墟の歌」の集会で、歌い手が1日がかりで彼らの過去の物語を歌う。その歌い手が舞台で着用するローブのメンテナンス作業だ。連綿と修復されながら引き継がれたローブには、美しい色とりどりの糸で、彼らの崩壊や再生の歴史が描かれている。

彼女は糸の染色についても次第に学んでいくが、どうしても「青」の染色方法だけは、コミュニティの誰もが知らなかった。そしてローブの復元作業の過程で、彼女は次第に村の真実、隠し持つ秘密の側面を知り始めるのだった。

Ψ

Giver Quartetシリーズの2作目。前作「The Giver」で登場した人物たちは出てこないし、一見とてもマイルドだった前作のコミュニティとも、今回の主人公の住むコミュニティの様子は違います。

ですから「続編なのかな…?」とも思いますが、なんとなく世界観は地続きのようなフシもある…。

前作よりも凸凹が少ないと言われているようですが、個人的には前作よりも主人公に共感しやすくて、世界に引き込まれました。Kiraと年の近いThomasは冴えているし、かなり腕白なMattなど、子どもたちが魅力的だったせいもありますね。タイトルの美しさも、意味もぴったりで素晴らしいと思います。というわけで、一体、1巻と2巻はどこでどうつながるのかしら?と思いながら、3巻へ突入しますよー!

※Giver Quartetシリーズ、ブログ内リンク

  1. The Giver
  2. Gathering Blue
  3. Messenger
  4. Son

8/16/2014

The Giver (Giver Quartet)(YL5.5)

The Giver (Giver Quartet, Book 1)
HMH Books for Young Readers (1993-04-26)

The Giver (Giver Quartet, Book 1) (語数43,617語)

貧困も犯罪も病気も失業者もなく、すべての「家庭」が幸せな世界。12歳になるJonasは、そんなコミュニティの「記憶を継ぐ者」として選ばれた。

「与える者」として知られる老人から、彼はあらゆる「記憶」を引き継ぐトレーニングがはじまった。あらゆる「記憶」を自分のものとすることで、彼は、次第に、このユートピアの世界の残酷な偽善に気が付き、苦しみだす。

Ψ

すべてをコントロールされた世界で「安穏」と暮らすか、不安定だが自由な世界を選ぶか。

トレードオフの部分もありますよね。秩序正しい理想の世界と見えながらも、完全にすべてをコントロールする為には残酷な側面もあったりして。

管理社会ということで、昨年旅行へ行ったシンガポールを連想してしまいました。第三世界の「移民」は労働力以外の部分は徹底して認めない、というようなところがありますよね。当然、言論統制もありますし。でも「秩序」がなくなるよりは、多少の不自由の方がマシと解釈するべきなのかどうか。中東の混乱(…外野のちょっかいもありますが)をみてると、どちらが「マシ」なのか、一概には言えないような気もして、結構、モヤモヤしながら読んでいました。本作はGiver Quartetシリーズの1作目のようで、Jonasの今後も気になるところではあります。

※Giver Quartetシリーズ、ブログ内リンク

  1. The Giver
  2. Gathering Blue
  3. Messenger
  4. Son

※2014に映画化?

全米公開は8月だったみたですが、日本ではいつ公開されるのでしょうか?Meryl Streepもいい感じのメイクだし(笑)、Taylor Swiftもちょっと出演するようですね。めちゃめちゃみたい~!!シリーズやるんでしょうかね?(そっちも期待)

8/09/2014

Six Earlier Days(YL4.0)

Six Earlier Days
Six Earlier Days
posted with amazlet at 17.03.20
Knopf Books for Young Readers (2012-11-26)
売り上げランキング: 234,919

Six Earlier Days (語数6,900語)

Every Dayの番外編のような感じで、Rhiannonと出会う前の日々を飛び石で。Every Dayを読んでからどうぞ。Kindle版のみのようです。

8/03/2014

Every Day(YL4.0)

Every Day
Every Day
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Knopf Books for Young Readers (2012-08-28)

Every Day (語数74,593語)

もしも毎日違うからだに「意識」がのりうつっていくとしたら。毎日、違う環境、生活。でも毎日同じ少女を愛している。

どこの誰になろうとも、困ることはなかった。「A」はコツをつかんで、うまくそれまでやってきた。なるべく背負わず。気づかれることを避けて。自分がスイッチンぐした体の持ち主の、邪魔にならないように。

ある朝、Justinの体で目覚めるまでは。JustinのガールフレンドRhiannonとい出会うまでは。その瞬間から、もう「A」これまでの生き方に耐えられなくなった。ついに、日々会いたいと思う人を見つけてしまったから。

Ψ

というわけで、最初SFなのかな?と思いきや、「体」が変わるということで、いろんなティーンの(「A」は大体自分と同じ年頃の人にスイッチングする)生活を垣間見ることもできてその部分だけでも面白かったですね。それこそゲイの子やトランスジェンダーや、或いは自殺願望があったり、ひどいトラウマに悩まされていたり、すでに働く環境だったり、それこそ百貫デブだったり…。

毎日「体」が変わるから、「A」にとっては「体」とは、パッケージみたいなもの。毎日少女になったり翌日には少年になってみたりで、ジェンダーについてはとてもフラットなスタンス。「体」なんて「見た目」なんてそれこそ「パッケージ」に過ぎないと悟りきって大事なのは「中身」だと思っていた「A」だけれども、Rhiannonと出会うことで、少しはフツーの見た目を意識してみたり。

「体」と「中身」が切り離されている状況だからこそ、逆説的に見てきたりすることもあって、その辺が非常に面白かったです。

Rhiannonとの話は縦糸として面々とつながっていますが、1日単位で別人となり、まずは状況把握から始まって…、という感じで、わりと短めの区切りで1日が過ぎていくので、テンポよく読みやすかったです。

7/13/2014

Crime and Punishment(YL8)

Crime And Punishment (Annotated) (English Edition) (語数165,499語)

Rodion Raskolnikovは貧困の元学生で、ペテルブルクの通りをさまよい、がめつい質屋の老婆の殺人計画を考えていた。

「私は本当に実際に斧を持ち、彼女の頭を粉々にくだくつもりなのだろうか?返り血の中で、盗み出す…?本当に?」

Ψ

結構な長編で悪戦苦闘しました。色々なエディションが出てきますが、古そうなこちらにしたのはKindleでお安かったから…。しかし会話文は読みやすいのですが、地の文やら独白系がわかりづらいという印象。さらに登場人物が誰が誰だかを把握するのが前半は大変だと思います。さらっと愛称になってみたり、本名になってみたり…。それって誰のこと?ロシア人には普通でも、愛称まで知りませんね…!

以前、カラマーゾフを邦訳で読んだことがありますが、ドストエフスキーの描く主人公たちって、激しくて劇場型で(舞台で科白をしゃべってるみたいよ…)、しかも妄想壁というか…。気持ちが高ぶりすぎてて、目まぐるしいんですよね。特にRaskolnikovは今風にいえば中2病…。前半は彼の独りよがりな独白を読むのが個人的には結構苦痛でした。 とはいえ、後半などは「神なんか信じない!」的な部分も描かれていて、当時のロシアへの素養がある方なら、読み解くことも色々ありそうな印象は受けました。ま、恋人のSonyaの信仰心が最後にはうちかつ、って感じで決着つけていますけどね。

4/27/2014

The Pillars of the Earth(YL8)

The Pillars of the Earth (Kingsbridge)
Penguin Books (2010-06-29)

The Pillars of the Earth (Kingsbridge) (語数400,974語)

12世紀、封建時代英国が舞台の物語。

テーマは輝かしい大聖堂の建築。

著者のFollettは、細部にわたる野蛮で輝かしい中世の英国を再構築しています。広大な森、壁に囲まれた街、城、教会はおなじみの風景となってきます。戦争の爪痕や、日常生活や労働や愛が、複雑にいりこんで色鮮やかに描き出されます。

いつか立派で美しい大聖堂を自分の手で作りたいと夢みる棟梁のTom、美しい貴婦人Aliena、若くしてKingsbridgeの修院長になったPhilip、Tomの義理の息子となる才能豊かなJack、森の中で暮らし、魔女扱いされるEllen。石工から横柄な君主まで、人物一人一人の生き様が鮮やかに描かれています。

無実の男の処刑から物語は始まり、王の屈辱で終わるまでを、大聖堂の建設をめぐって、Follettは裏切りや復讐、愛で描き切ります。

Ψ

英文は読みやすいです。

登場人物は大勢で群像劇的なところもある。

大雑把にいえば「大聖堂」が軸ではあるものの、結構、個々のキャラクターも細かく描かれているので、誰が主人公なのかな?主人公がいないのかな?という感じで進んでいきます。

そしてバラバラっぽい個々の伏線エピソードの、後半での回収っぷりがハンパないです。あのエピソードをここで拾ってきたか!え、この人物にはこういう運命?…という納得感と驚きが怒涛の勢いでやってくる後半はまさに圧巻。

とはいえ、そんな感じなので、特にお気に入りなキャラクターはおらず、不快なキャラクターは何人かいる、という感じで、伏線エピソードがばら撒かれる前半戦は、なかなかのれませんでした。当時のディティールは面白いんですけど、最初から最後まで不快なWilliam Hamleighを筆頭に、不快な事件も多くて、どんよりしてたんですよね。彼が登場する度に、テンション、ダダ下がり…。

後半はエンジンがかかってきましたが(読書スピードUP!)、最後までこれでもかという位、不幸も訪れまくりなんですよ。

とはいえ、全体としては文句なく面白いです。史実と創作が入り混じって、その史実をこういう風に織り交ぜたか!的な面白さもありますし。個人的に一番面白かった部分は、言わずもがなの大聖堂の建設工程のディティールと、「信仰」の部分ですね。

特に修院長Philipの考え方には興味をひかれました。彼は神との関係がとても1対1で、神はどう考えているだろう、ということをいつも気にしている。他人の目は関係ない。神の視線を気にしている。どうすることが「正しい」のか、神の存在を意識しながら、考え続けている、といった感じです。言われてみれば、そういうものか、と思うわけですが。「無宗教」なので、彼らの「信仰」とはそういうものなんだ、と垣間見た気がしたわけです。

「殉教」の使い方も冴えていたし(殉教者を出しちゃうと、大抵殺人側はわりに合わない位負をしょいこみますよね)、後半での王権と教会との対立と着地点も巧いの一言ですよね。

1/14/2014

Whiteout(YL7.0)

Whiteout
Whiteout
posted with amazlet at 17.03.20
Penguin Books (2004-11-23)

Whiteout (語数114,699語)

ToniGalloはセキュリティ責任者だ。

彼女はエボラウイルスより危険なウイルスが、実験動物のウサギと共に、スコッ トランドの研究所から盗まれたことに気付いた。しかし自体はウイルスが盗まれ ること自体よりも悪い方へ転がっていく。内部からの援護により、テロリストの 攻撃ので利用する為に盗まれたのだ。

クリスマスイブは吹雪になっていたけれども、地元警察の協力はほとんどなく、Toniはウイルスを取り戻し、バイオハザードを防ぐために、犯人を追跡しなけれ ばならなかった…。

Ψ

製薬会社にギャング侵入して、危険なウイルスを盗み出す、という話なので、バイオハザードもの?と思っていたら、メインはアクションと家族もの、という感じ。

とはいえ、製薬会社の社長のクリスマスともなれば、一族が家に集まってくるわけですよ。その書き分けが巧い。それぞれの思惑や行動が後から振り返ればもう伏線だらけで、ああここで!と伏線も綺麗に回収していくんです。

てんで勝手に動いてみえる登場人物も、いちいち説得力あるし、展開はどんどんハラハラになっていくし、お見事です。

英文は読みやすいです。こんなクリスマスは御免こうむりたいですけれども、冬に引きこもって没頭するにはもってこいの一冊ですね。