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9/13/2014

Messenger(Giver Quartet)(YL5)

Messenger (The Giver Quartet) (The Quartet Book 3) (English Edition) (語数36,627語)

奇妙な変化が村の中では進行していた。

かつてユートピアだったコミュニティは、よそ者を歓迎していた。そもそもこの村の住人たちの多くは、よその村からの追放者たちの集まりだ。この村で生まれ育った者もでてきたが、多くはなんらかの事情があってよその村からやってきたものたちだ。お互いをいたわりあって、コミュニティを形成していた。

しかし村はまもなくすべての部外者に対して閉鎖するという決議をとった。これ以上、移民を負担することはできない。川からとれる漁獲高も減ってきたし、お互い噓をつかない、盗まない、助け合うといった村のルールを新参者のよそ者に対して"教育"するコストもばかにならない。よそ者を受け入れるメリットはどこにあるのか?

村の周囲は深い森だった。森には野獣こそいなかったが、森からの「警告」を受けたものが森に分け入ると、森に殺された。森からの「警告」は鋭い小枝での攻撃、刺してくる虫、有毒植物などのケガといった形であらわれる。

Mattyは危険なその森を通って旅することができるごくわずかなもののうちの一人だった。彼は森から好意を受けているようで、何度となく無事に森を潜り抜けていた。結果として、Mattyは点在する他のコミュニティへ、村の決議の結果を伝えるメッセンジャーとなる。それと同時に、村の閉鎖前に、Seerの娘でありMatty自身の幼馴染でもあるKiraを、説得して村へ連れてくることをSeer自身からも頼まれた。しかし指名を受けたMattyがいざ森へ入ると森は敵意をみせた。果たして彼は村の閉鎖前に、KiraをSeerの元へ連れてくることができるのか。

Ψ

ようやくこの3巻で、1巻と2巻の物語がつながりました。この村の中で1巻の主人公Jonas は"Leader"と呼ばれているようです。

盲目の人Seerは、2巻のヒロインKiraの父ですし、Mattyはあの犬を連れて回ったいたずら小僧のMattですね。

前半はかなり面白く読みました。1巻や2巻で出てくる残酷なよそのコミュニティの様子を知っているだけに、2巻ではKiraの父が世話になっている村はまさにユートピアに見えました。そして実際、この村はユートピアだったのです。1巻からこのシリーズにつきあっている読者にとっては、JonasはLeaderとしてこんな村を作っていたのか、と感慨深いものがありました。しかし、そのユートピアでさえも、世代交代もしてないというのに、移民排斥の動きを見せます。

移民排斥──どうしたってリアルな世界でのEUのことを連想してしまいます。或いは独立の動きをみせているスコットランドのこと(独立した方が経済的に得なんじゃないか、小さな枠組みの方が自分たちの意見がより反映されやすい民主主義になるのではないか等々が議論の要のようですね。アンチグローバリズム的な側面を感じますが、この押し寄せるグローバルの波の中でリアル世界ではそんなことが可能なのか?など。小説の中では森に囲まれているという独立性があるので、一種の島国根性でやっていけるかもしれませんが)。

一体、Jonasたち村人はこの問題にどういう結論を出すのでしょうか?期待したいと思う一方で、現実問題をふりかえっても、そうそう安易に出る答えではありません。

ここで村が閉じてしまえば、結局、ユートピアは存在しない or 閉じた世界でしか「ユートピア」は完結しない、ということではないのか?etc…。

しかしこの巻では、未決着のまま、衝撃のラストを迎えます。あの優しいいたずら小僧が…、という感じで、ちょっと消化不良気味なのですが、4巻では一体どんな展開が待っているのでしょうか?

※Giver Quartetシリーズ、ブログ内リンク

  1. The Giver
  2. Gathering Blue
  3. Messenger
  4. Son

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