Odinn's Child: Odinn's Child No. 1 (Viking) (語数約124,000語)
物語の語り手はサーガで有名なLeif the Lucky and Thorgunnaの息子Thorgils Leiffsonです。
第1巻では、彼が生まれる少し前の母の話からはじまり(主人公は999年生まれ)、10代の終わりごろまでを描いています。どうやら著者はいろんなサーガを詰め込んだようで、主人公のThorgils自体はLeifの息子としてサーガに登場する人物のようですが、ちょっと気付いた分だけでもSaga of Erik the Red、Greenland sagaあたりはVinland絡みの家系なのでNjáls saga、Orkneyinga sagaあたりも出てきます。
早くに母を亡くし、少年時代にVinlandへ行ったこかと思えば、Greenlandへ戻ってからは父Leifからも疎まれ、半ば母の足跡を訪ねて、IcelandやIrelandへ。そこではアイルランド闘争に巻き込まれ、Clontarfの戦いに参戦…。
後ろ盾もない彼は、どこへ行っても「異端者」で根無し草のキャラクターです。ただし場所、場所で、侵略してくる「White Christ」に抗い、古いしきたりに従う様々なメンターが彼の前に現れ、彼はOdinnの存在を感じます。彼には様々な危険を潜り抜けることになりますが、ギリギリのところで助かり、ますますOdinnの存在を信じるのです。
というわけで、主人公の移動距離・根無し草っぷりが素晴らしいので、VinlandでのSkraelingsとの遭遇や、IcelandでのAlthing見物、Irelandでの様々な領主、王たちの争い、ケルト文化の権化ともいうべき人物との出会いまでいろいろな要素が詰め込まれていて大満足の一冊でした。前半は結構開拓暮らしなので、あ、鉄腕Dashでやってたわーとか思いながら、読んでいました。
ちなみに作者のTim Severinはアイルランド在住のイギリス人ですが、有名な冒険家でもあります。航海伝説を実証するために革張りのボートで実際にニューファランド諸島まで実験航海をしている方です。これほどVinlandまでの航海を語るうえで適切な人もいませんよね。フィクションとはいえ、本書に登場しくる様々な道具や生活ぶりの手触りが、一定程度の説得力があるのも、彼のこうした実験実証魂から相当きているような気がします。
こちらの本も登場人物が相当でてきますので、代表的なところをリストにしてみました。ネタバレありのリストなのでご承知おきください(史実やサーガの人物ばかりなので…)。
主人公の幼年期
- Thorgils…主人公。999年生まれ。スコットランドの北部Birsay生まれ。クリスチャンネームはThangbrand。
- Thorgunna…主人公の母。Dublinの貿易船でScotlandの一画mBirsayへやってきた。そこでたまたま寄港したLeif Erikosnと出会う。Völva(シャーマン的な女性)の能力があったようで、主人公もその才能を引き継ぐ。
- Leif Eriksson…「赤毛のエリク」の2番目の息子。主人公の父。幸運に恵まれているので、「Leif the Lucky and Thorgunna」というニックネームも。
- Thorvald Erikson…「赤毛のエリク」の。次男。LeifのVinlandの探検の結果に興味を持ち、Vinlandを探索、先住民のSkraelingsに襲われる。
- Thorstein Eriksson…Leifの末弟。家族思いで、Vinlandで亡くなった兄の亡骸を取り戻しにVinlandへ目指すが…。
- Freydis…主人公のおば。Erikの庶子。かなりのトラブルメーカー。彼女もまたVinlandへ旅立つ。
- Thjodhild…Erickの妻。グリーンランドでは子どもたちにアルファベットとかを教える先生役。早くからクリスチャンになったので、夫のErickとはその点で対立。
- Gudrid Thorbjornsdottir…主人公の幼少時の育ての親。若くて美人な未亡人。Völvaの才能があるようだが、熱心なクリスチャン。主人公が7歳くらいのとき、父親の末弟Thorsteinと再婚。Thorsteinが無謀な旅で亡くなった後には、Thorfinnと再婚。彼と一緒にVinlandへ。
- Thorir…Gudridの夫。東部出身の商人。グリーンランドとアイスランドの定期貿易のパイオニア。
- Thorvall the Hunter…五十代後半だが二十代並のタフさで左目から耳にかけて傷があり、少年たちからは畏敬の念。主人公のメンター。
- Thorfinn Karlsefni…Gudridの三番目の夫。アイスランドの商人。Vinlandを目指す。
- Tyrkir the Smith…ドイツ周辺出身のLeifにとっては育ての親的な奴隷。メンター。
- Thorvall the Hunter…五十代後半だが二十代並のタフさで左目から耳にかけて傷があり、少年たちからは畏敬の念。主人公のメンター。
Icelander…主人公がGreenlandから追放された直後に出会った人々
- Snorri Godi…Icelandでわりと権力者。グレイの瞳で表情を読ませない。じっくり考えて行動するタイプ。
- Thrand Stigandi…怖そうな見た目だが、Snorriの友だち。Ordinを信仰し、予見能力をもち、主人公14歳くらいのメンター。古い神々について彼の元で主人公は体系的に学ぶ。
- Flosi Thordarson…Burners側のリーダー。
- Eyjolf Bolverlsson…法律に詳しいのでFlosiに買収された。
- Thorhall Asgrimmsson…Njalが育ての親。右の足首が感染している。法律に詳しい。
- Kari Solmundarson…Njalの義理の息子。戦士。主人公に目をかけ、IcelandからIrelandへの橋渡し役。
Orkney
- Sigurd the Stout…Orkneyの伯爵。
- Eithne…主人公の母Thorgunnaをかつてむかえ入れた伯爵家の妻。Ireland出身のVölva。Sigurdの母。
Irelander…1014年Clontarfの戦い前後。主人公が15歳くらい。
- King Sigtryggr…Dublinの王でSigurdのところへ相談にきた。Norseman。商業で大儲け。
- High King Brian Boruma…戦いにつぐ戦いで暴れまわっているタイプのアイルランド上王。外国人を追い出そうとやっきだが、彼の兵士自身が外国人で構成。キリスト教を広めようとしている。
- King of Leinster…DublinをHigh Kingと共に狙っている。
- Kormlod…IrishはGormlaithと呼ぶ。Dublinの王Sigtryggrの母であり、Borumaの元妻(ケンカ別れなので恨んでいる)。King of Leinsterの姉妹。
- Brodir…巨漢で髪の長いViking。Dublinの王Sigtryggrが同盟を求めた。Thrandの友だちであり、少し予知の能力をもっている。
- Donnachad…貧しい村のリーダーであり、Battle of Clontarfで主人公は彼に捕まり、奴隷になった。
St Ciaran…主人公はDonnachadの未納の税金のかわりに教会へ引き渡され、三年くらいを見習い修道士として過ごす。
- Abb Aidan…修道院の院長。修道院の強化には並ならぬ意欲をもつ。
- Saev Credine…軟弱にみえるけど、修道院きっての石工。
- Brother Senesach…若者の教育係。気立てがよいので人望ある。
- Brother Ailbe…司書。本のことになるとうるさい。
- Brother Domnall…技量のある診療所の治療師だったが疫病対策で旅立つ。
- Brother Cainnech…Domnallのアシスタントで、診療所を引き継ぐ。患者をいじめるのが好き。
- Bladnach…足は不自由だが、凄腕の針使い。本を保護するかばん自体が聖人によるもので貴重だから、ボロボロの鞄の修繕をたのまれる。
- Orlaith…Bladnachの娘。
逃亡生活中のIrelandで出会った人々
- Eochaid…birthemということですが、いわゆるケルトのドルイド。あらゆることに精通した賢人で、主人公のメンター。彼の存在は感動的ですね!
- Ardal…Thorvall the Hunterにクリソツ。King's Champion。戦士。The Ua Cannannainに仕えている。
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